マスコミ報道について     2007年8月15日

 今回の参議選はマスコミが自民党を惨敗させたという側面があった。

 柳沢厚生大臣の「女性は産む機械」発言あたりから始まって、事務所費の不正支出問題、5000万件に及ぶ年金記録の行方不明問題、自衛隊の民主組織へのスパイ問題、農水大臣の事務所費問題や地元での緑資源問題及びその後の自殺、と後を引き継いだ赤城農水大臣の事務所費用問題および、例の絆創膏問題など朝から晩まで報道され続けた。
 事実報道だけでなくニュース解説や関連番組では識者のコメントが繰り返された。その中で安倍が争点にしたかった憲法問題はいつの間にかだれも話題にしなくなってしまった。

 もしも、安倍が意図したように憲法問題が争点になっていたならば、選挙結果は今回とはずいぶん違ったものになっていたと思う。民主党は憲法問題では右から左までいるので意思統一が出来ず、党首発言もあいまいなものになり、異論続出と言う状態が生まれたかもしれない。それを警戒した小沢は早くから「格差是正」や「生活支援」などを打ち出した。だが、早い段階では必ずしも憲法問題が争点から外れるかどうかははっきりしなかったのである。

 今回一番の争点になった年金問題は20年以上前から分かっていたことで、1年前に長妻議員が取り上げた問題であった。だから、そのことを知っている議員はたくさんいたし解決を考えていた議員や役人もいたはずである。恐らく安倍総理もこれを組合たたきに使って解決することを狙っていたのだと思う。ところが、年金問題は「5000万件の年金記録が行方不明」とうショッキングなタイトルで大きくテレビと新聞に出たことがきっかけで、国民の関心は一挙に政府不信になってしまった。事務所費問題や不正落札・談合など、他政党の議員もやっていたはずなのに、自民党だけが大きく報道されたり、つかまったりした。

 こう見てくると、マスコミによる今回の安倍たたきは偶然ではなく、何者かの意図によって行われたのではないかと推測できる。もちろんこれは私の勝手な推測でそれを実証する証拠は持っていないし、正確な記事の論証もしていないが、選挙全体を振り返るならば、そのような気がしてならないのである。

 以前の版画館通信にも書いたのだが、辻本清美の逮捕のときもマスコミは連日大騒ぎをして彼女と土井たか子の政治生命を終らせようとした。もっとさかのぼると、宮本顕治のスパイ査問事件を持ち出して彼と共産党を葬ろうとした。どれをとっても政治問題ではなく「かね」や「暴力」などの問題を探し出して大騒ぎすることによって相手を落とすことを目的にしていた。

 恐らく事務所経費の不正支出は政権与党や旧自民党議員(現民主党議員)のほとんどは当たり前のこととして行っていただろうし、女性問題や秘書給与の問題も多くの議員は当たり前のことだったに違いない。だから、権力がその気になって調べ上げ、追及すれば不正は限りなく出てくるのだ。そこで、権力は自らに都合のよい人物にねらいをつけてターゲットにしたのである。

 私が知っているなかでマスコミが大きく選挙にかかわったのはこれが二度目である。一回目は細川内閣成立の際で、あの時は「新しい政治の始まり」が起きるかのような論陣を張った新聞がいくつかあった。今回は、新しい政治の始まりを期待すると言うよりは、安倍たたき、靖国派たたきが中心のように見えた。あれだけ政府をたたき、閣僚を批判しながら、民主党の政治への期待や政策を大々的に紹介した報道はほとんど無かったのではないだろうか。その点は細川内閣成立のときとは論調もかなり違っていた。

 安倍晋三の従軍慰安婦問題への対応、靖国史観、拉致問題へのこだわりなどを総合的に考えると、アメリカにとってもはや安倍内閣は好ましいものではなくなったと判断したようにも思われる。もちろんこれも推測の域を出ないが、、、、

 さて、このように考えると、「マスコミが二大政党をあおる」「マスコミは反共攻撃をする」というお題目を唱えるだけではマスコミの姿を正確に語ったことにならないことがわかる。時には反共よりも反自民の宣伝をすることもあるのだ。私はいままで「マスコミは権力の味方をするもの」と思ってきたが、今回の報道をみて、必ずしもそうではないことが分かった。もっと正確に言うと現政権の味方をするとは限らないということが分かった。現政権がより大きな権力にとって邪魔になったときはどうされるかが分かったのである。


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