藤井醇昆虫写真展おわる      2008年8月22日

 敬愛する藤井醇さんの撮影した昆虫写真展(8月6日〜17日)が終わった。
 今回の写真展をするに当たって藤井さんはいくつかの工夫を試みた。

 1、額装する際にガラスをはめずに直接写真を見れるようにした。そのため、写真が光らず美しい色を見ることができた。
 2、写真を印画紙に写すのでなく和紙に印刷した。和紙の表面はいくらかでこぼこしており、光沢を吸収し光らないので画面がしっとりと落ち着いていた。
 3、今までの展覧会は一枚一枚の写真を額装して飾っていたが、今回は数枚の写真を一組にして組写真を作った。
 4、毎日1点の写真を身近な場所で撮影し、「日々の出会い」として展示した。5、作者が観客に実に丁寧な解説をした。

 こんな工夫もあり、展覧会は成功した。
 
 何を以って成功というと、来館したお客様がとても満足してくれたことにつきる。
 何人かは見たあとで私に「今日は本当に来てよかった」と言って帰った。他県からの客も含め一人や二人ではない。
 美術館としてもこういう展覧会はやってよかったと満足している。

藤井さんのこと


 この写真は奥さんが撮った写真であるが、実にインパクトがあった。
 一昨年、最初の「昆虫講座」をひらくとき、講師の写真がないので送ってくれと頼んだら、「これから撮って送る」との返事があり、間もなく送られてきたのがこの写真だった。あまりに素晴らしかったので、誰が撮ったのか聞いたところ、奥さんが撮ったといわれ,私は仰天した。これではプロ顔負けではないか。
 今回の写真展に来館した何人かは「この写真に惹かれてきた」と笑いながら話した。私達と絵本つくりをしている娘さんは「この写真の先生に是非会いたい」といって次の会に出席したほどである。

 プロフィールを見ると彼は東京で生まれ、疎開で稲荷山に越してきて屋代中学を卒業している。その後東京に出て豊島園の「昆虫館」館長をやり、その後フリーで昆虫写真のカメラマンとして活躍していた。著書も数多くあり、講談社や福音館、NHK出版などの一流出版社から昆虫の本を出している。私も「ふゆのむし」という福音館の科学絵本を読んだ覚えがある。

 彼との出会いは一昨年のある日ふらりとやってきて美術館を見学し、珈琲を飲みながら四方山話をするうちにすっかり意気投合してその場で「友の会」に入会してくれた。こういう人は今までほとんどいなかったので強く心に残った。「この人と何か企画できないだろうか」と考えて「昆虫講座」の講師をお願いし、それ以来のお付き合いである。

 今回の写真展でいくつか学んだことがあった。
 彼は「自分の写真を見ていただくのだから、誠心誠意客のために説明するのは当然だ」と言う態度に徹して来館したひとには誰にも区別なく詳しい説明をした。家に帰っているときも、来館者が来たときは自転車に乗って駆けつけた。説明は一時間にも及んだが、退屈する人はいなかった。

 昼になるとカメラを持って近くの公園に出かけたり会場の近くを歩き、昆虫の写真を撮った。その写真を翌日展示したのだが、身近なところに意外な虫がいて驚いた。その気がなければ「見ても見えず、聞いても聞こえず」とはよく言ったものである。何枚かの写真を見て、私もその気になってみたところ、何種類かの虫を発見できた。

 展覧会の準備に集中し、額装のときのマットを十数枚買って自分でマットを切って写真をはめ込んだ。額屋さんは「自分でマットをきるのは大変だよ」とわたしに話したが、藤井さんは結局全部自分で切って展示マットを作りあげてしまった。マットの穴は大きいものから小さなものまで、たて並びから横並びまで様々で見事に作られていた。「マットのなかに昆虫の写真がうまく配置されていて素晴らしい展示ができましたね」と感心したら、藤井さんは「一枚や二枚だと大変でしょうが、これだけ作ればうまくなりますよ」と笑っていた。たいへんな集中力で思うような展示方法を見つけ出した藤井さんからおおいに学ばされた。

 ここに掲げた3枚は「羽化」の題でまとめられたマットの一部である。それぞれの虫の羽化の写真であるが、このようにまとめて見ることによって昆虫の羽化の様々な違いがよくわかる。

       カメムシの羽化(脱皮の最中)             カマキリの脱皮直後      ツマグロヒョウモンの羽化
 このような写真は1年や2年ではとても撮れないだろう。数年・数十年のキャリアがあって初めて可能になる。さりげない展示にも苦心のあとが見られた展示であった。

 

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