上野誠とケーテ・コルヴィッツ 2     2009年12月25日

1、 自画像
 ケーテ・コルヴィッツには多数の自画像がある。『ケーテ・コルヴィッツの肖像』を書いた志真斗美恵さんによるとコルヴィッツには800点余の自画像があるという。これに対し上野誠は僅かに1点の小品があるに過ぎない。
 自画像に限らず、肖像画は単にモデルに似せるための絵ではない。描く対象の人物像の内面までを画面に描き出すことでなくてはならない。それは自画像であっても同じことである。

 コルヴィッツの自画像を見ると、そこには自分の内面が描き出されていることが分かる。

額に手を当てた自画像 1933年自画像 老いたる自画像
 
 「額に手を当てた自画像」は、深く自省している様子が表現されているし、「33年の自画像」の正面を見据えている眼は、自らの意思を強く表現している。これに対し「老いたる自画像」は戦いと言うよりは静かに自分の現在を考えているように見える。

 上野誠には1点だけ自画像がある。

 
 この作品は10センチにも満たない小品であるが、めがねの向こうの目は真正面からこちらを見つめており、眼光も鋭いが、あまりにも小さく、これだけでは迫力不足である。

コルヴィッツはなぜ自画像を描き、上野はなぜ1点しか自画像を描かなかったのだろう。

2、自分を描くコルヴィッツと他人を描く上野誠
コルヴィッツは自画像以外の作品も「己」を描いているように見える。例えば連作版画「戦争」シリーズである。


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