前原外相辞任をどう見るか     2011年3月9日

 前原外相が辞任した。理由は外国人からの献金を受けたからというものである。彼は幼少の時から世話になっていた在日韓国人の女性から5年間にわたって毎年5万円の献金を受けていた。それが違法だから辞任した。

 このことをめぐっていろいろ言及されているが、私は多くの人と違い、これをみて「前原恐るべし」と思っている。その理由は何か。

 一連の行動を見て世論はどう反応するだろうか。
1、たったの5万円で外相を辞任するとは気の毒だ。
2、前原は金にきれいだ。金に汚い議員ばかりなのに、こんなに爽やかで潔い人もいるのか。
3、小沢や麻生と比べると前原の顔はいかにも穏やかで善人に見える。
4、前原は尖閣諸島問題などで中国やロシアに対して骨のある態度を示している勇気ある政  治家だ。

 私は、国民の多くは前原をこのようにみるのではないかと予想している。また、前原もそのような計算をして辞めたにちがいないと思っている。

 前原は、彼を知る人の間では、以前から「金に汚い政治家」と言われていた。特に貸金業者から多額の政治献金を受け、貸金業の規制法に対して強く反対した経過がある。暴力団とのつながりなども言われてきた。つまり、黒いうわさが絶えない政治家であった。ところが、今回の一連の行動で、そのイメージは180度変ってしまった。

 5万円というと、政治献金の報告をする最低の額である。取るに足らない金額の献金を受け、その事実を国会で追及された時、前原は実にあっさりと事実を認めた。認めてから辞任までのスピードも速かった。今迄の政治家は事実をなかなか認めたがらなかったのに対し、あっけない程素直に認め、それが違法であることも認めた。このようにあっさりと違法を認めた政治家が今までいただろうか。

 前原の外交に対する方向性は一貫していた。対米従属と中国・朝鮮敵視である。柔らかな言い方で言うと「アメリカと親しく交わりながら、アジアでの影響力を強める」という方針である。
 方向性は一貫しているが、外交のやり方は稚拙であった。その代表が尖閣諸島問題である一連の経過が示しているのは、この事件以来中国との関係が悪化し、国民の間には相手国に対する嫌悪感が広がった。

 尖閣諸島で中国漁船と衝突した直後、前原は漁船の船長を逮捕し「中国との間には国境問題は存在しない」「船長の処分は国内法に基づいて粛々と進める」と語っていたが、中国の強固な反撃にあって、一転して屈辱的とも見える処理をした。すなわち、裁判所に外交問題の判断をさせ、自分の責任逃れをしたうえで船長を釈放した。
 一貫しない前原外交を見て「日本組しやすし」とみたロシアは、素早く北方領土に首相を送り込み、既成事実となっていた領土の専制を固め、今や4島どころか2島も返る見通しが遠のいてしまった。これは外交の敗北である。

 小泉首相は尖閣へ中国船が乗り付けて上陸した時、上陸した中国人を捕まえて本国に送り返した。これは裁判という公の場に上げないで処理したので、中国は何も言わなかった。つまり、日本の実質支配を認めていたのである。今回はそれを表に出したので中国も表に出て争った。結果は経過の示すとおりである。

 今回の事件は菅内閣にとっては打撃かもしれないが、前原誠司にとっては実に大きな利益になったにちがいない。すなわち「ダーティーな前原からクリーンな前原に」「稚拙外交の前原から勇気ある前原に」「対米従属の前原から米国の信頼厚い前原に」と今迄の欠陥を長所であるがごとくイメージを変えることができたのである。

 以上で私の意見は終わりなのだが、ちょっとした疑問もある。
 前原と焼き肉屋の韓国人女性とは幼い時からのつき合いがあった。だったら、この五年間の間に献金の話はどこかでされている筈である。

「おばちゃんこの間は献金ありがとう。とてもありがたかった」
「いつも僅かで悪いね」

と言った会話があったように思うのだ。個人的に親しい人からの献金であるならば、額の大小でなく本当に嬉しいのは当たり前だろう。だから、女性から献金された次に会ったときは必ず丁重なお礼を言たにちがいないと思うのだ。
 


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