福島原発事故 1    2011年3月29日

 3月11日の災害は地震・津波と福島原発事故が重なり未曾有のものとなった。巨大津波は多くの人の想定外であったが、原発事故はすでに多くの人が予想し、警告していたものだったので、半分以上は人災でもある。

 私は以前から原子力発電には疑問を持っていたが、心のどこかに「原発は安全である」という思いがあった。そのため、ろくに勉強もせず、反対の声も上げないで今日まで来てしまった。

 今回の事故からあわてて本を読んだりインターネットで調べたりし、考えられないような事実を知り、驚くと同時に今迄の自分の怠慢を悔いている。

 最初にいくつかの事実を見る。

http://www.videonews.com/press-club/0804/001742.php

http://www.cnic.jp/modules/fukushimaNPP/index.php?content_id=1#archive

 後藤政志という名前はこのインターネット放送で初めて知った。それどころか「原子力資料情報室」という名前すら知らなかった。この記者会見をみて後藤政志さんが優れた技術者であることがわかった。優れたと言うのは、彼が東芝の原発格納容器の設計に携わっていたというだけでなく、解説が大変わかりやすかったこと、本名を出して説明していたこと、分らないことは分らないと率直言っていることなどから判断できた。

 この会見でわかったことは
1、原子炉のことをよく知っているのは製作した技術者であり東京電力の社員ではないということ。
2、NHKはじめ、マスコミに登場する専門家(多くは東京大学教授)の解説は信用できないということ
3、今回の事故は既にくり返し指摘されていたにもかかわらず、あり得ないとして退けられていたこと
であった。
更に調べると次のような事実もわかってきた。

http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html

http://www.ustream.tv/channel/cnic-news

1、原発の危険を指摘すると学問世界・マスコミから追放されてしまうこと。
2、政治家・学会・電力会社(産業界)が結託して「はじめに原発ありき」の政策を推し進めてきたこと。そのために莫大な金と地位と名誉が与えられたこと。
3、彼等はマスコミと一体になってこの方針を宣伝し、国民をだまし続けていることなどである。

しかし、私が最も驚き感動したのは、これらの迫害にもかかわらず、学者として技術者としての良心に従って原発の危険性を訴えつづけたひとが何人もいたということであった。

ひとミュージアムで購読している「DEYS JAPAN」2011年1月号をみると広瀬隆さんが次のように述べている。
 誰でも、原発は危険で怖いものだから、相当な耐震性をもって設計されていると信じているだろう。まさかあの耐震性を偽装したマンションのようなことはあるまい、と。
 ところが去年(2010年)8月に、東海大地震とは比較にならない、小さな地震がこの駿河湾で起ると、東名高速道路が崩落してお盆の帰省客が立ち往生したが、それだけではなかった。御前崎にあった「日本最大の原子炉」浜岡原発の5号機で、最大地震のために想定していた揺れ、つまり耐震強度をあっさりと超えてしまい、中部電力が真っ青になったのだ。 
 いよいよ起ろうとしている次の東海大地震では、地球がクシャミをしたあの小さな揺れのざっと700倍という巨大な力が襲いかかると予測されるのだから、ここで原発の破滅的な巨大事故がおこり、日本が壊滅すると断言しても、私の頭がおかしいというわけではまったくない。(中略)
 東海大地震が発生すれば、先に述べたように、御前崎にある浜岡原発の敷地が1〜2メートルというとてつもない隆起を起こし、1〜2分という長時間に及ぶ地震動の揺れが襲いかかることが分っている。これによって、もっとも怖いのは、原子炉から出る熱を奪うはずの水蒸気と水の流れが、断ち切られることである。(田島註:福島原発事故ではパイプではなく水を循環させるポンプが動かなくなった)
 というのは、ウランが核分裂をしている原子炉の熱は、大口径の配管によって、水蒸気としてタービンに送られ、発電機を回転させたあと、復水器と呼ばれる熱交換機によって海水で冷やされ、液体の水になり、原子炉の方に戻っていゆく仕組みになっているからだ。
 したがって、その途中にあるパイプが1か所でも地震によって一瞬で折れるようなギロチン破断がおこると、この巨大な熱の流れが断ち切られる。すると原子炉から熱を奪うことができなくなり、炉心溶融(メルトダウン)という末期的な事態に突入してゆき、炉心の底が抜ければ、地下水にぶつかって大爆発を起こす。
 これを食い止めるために、緊急事態ではECCS(緊急炉心冷却装置)という予備装置が作動して、原子炉に冷水を投入することになっているが、大地震ではECCSの配管も折れてしまうはずだ。(田島註:このポンプも動かなくなった)
 加えて、この冷却系配管は、原子炉建屋とタービン建屋という別々の建物の中を、巨大な蛇のように通り抜けている。
 原子炉建屋とタービン建屋は、基礎工事から異なる別物なので、地震の揺れは、両者で互い違いに上下動することが予想される。たとえ原子炉建屋が頑丈でも、耐震性の低いタービン建屋が破壊され、配管系が熱を奪わなくなる可能性は極めて高い。
 (後略)

 今回の地震は東海大地震ではなかったが、ここで想定されていることはほとんど当てはまった。今回の地震では大津波がおこったが、東海大地震では直下型の揺れが想定されている。広瀬さんが予想しているのは、冷却装置が壊れたり、配管が切断され炉心を冷やす水がストップしてしまうことである。

結論として私が思ったことは
1、「原発は絶対安全」と言ってきた東京電力はもちろん、専門家や政府機関は間違っていた。それは安全より儲けを優先した人々が主導したからであった。そしてそれを許してしまったのがマスコミと国民であった。それをチェックするマスコミがむしろ推進側に立っていたからである。
2、事故の主要な責任は 1、東京電力(当事者として当然であろう) 2、日本政府および原子力安全委員会・保安院 3、原子力関係の学者(審議会委員、専門の機関役員などに関わり、安全性を主張した人物) 4、原子力の安全性を主張してきたマスコミ 5、福島県知事 にある。しかし、その何万分の一かは原発賛成の彼等に投票した国民にもある。企業・政府関係者・学者・マスコミはグルになり、お互いに持ちつ持たれつの関係を作り、互いの利益誘導をすると同時に、彼らに反対する人や組織を徹底的に排除しつづけた。原子力関係の法律や許認可の時期になると学者や官僚が接待漬けになることや、マスコミ対策に抜かりがないことは、今回の事故当日東京電力会長が(費用東電持ち)大手マスコミ幹部と中国に行っていたことをみても明らかである。
3、日本には「原発は危険で事故の恐れがある」と言ってきた人がたくさんいた。今回の事故で彼らが主張していたことが本当だったことが劇的に明らかになった。彼等は「機械は必ず毀れる」「人間は必ず間違いを犯す」と言っただけでなく「原子力事故は当事者だけでなく、計り知れない人々に影響を与え、時には人類の存亡にもかかわるから、他の事故とは根本的に区別しなければならない」と主張しつづけ、自分が迫害され出世の道を断たれても良心に従って危険を訴えつづけてきた。(例えば小出裕章氏は京都大学助教ー以前の助手―で35年間そのままである)  また、共産党の吉井英勝議員は国会で福島原発の事故をほぼ完璧に想定した質問をしていたが、原子力安全委員会は「安全であり、問題ない」と答弁していた。(共産党員が現在でも差別・迫害され続けていることは東京電力の人権差別裁判でも明らかである)
4、福島原発事故の今後はまだ分からないが、結果がどうあれ、政府・財界・有識者・マスコミは原発を存続させるよう動くにちがいない。そして、最大の被害者である多くの人々はおそらく今後も騙され続けろのではないかと危惧している。それは、間もなく行われる統一地方選挙の結果を見れば見当がつくだろう。


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