菅おろしの不信任案提出をどう見るか    2011年6月4日

 菅首相の原発対応が悪いとの理由で自民党と公明党が菅内閣不信任案を提出した。
当初、この不信任案は否決されることが自明とされていたが、いよいよ提出が目前になると民主党の中に不信任案に賛同する勢力が増えて、前日の夜開かれた小沢派の会議には71名という数の民主党議員が集まり、「不信任案可決か」という情勢になった。

 そこへ出てきた鳩山が間に入り「菅首相の早期辞任」というシナリオが描かれた。鳩山によると「第2次補正予算の成立の見通しが立った時点での辞任」ということで合意したとされている。そのことがあって民主党議員総会で菅は「原発事故が一定の終息が見えた時点で若い人に引き継ぎたい」という主旨の発言をし、引き続く鳩山の「第2次補正予算のめどが立った時点で辞任されたい」という発言で、不信任案に対して大方の議員は反対した。

 ところが、その直後の首相記者会見で、菅は「原発事故の終了のめどとは、原発の冷却機能が正常化する時期だ」と言ったので鳩山は「それは我々をペテンにかけたようなものだ」と怒った。というのは、補正予算のめどが立った時というと、6月か遅くとも8月ということだが、原発事故の終息というと、早くとも「行程表」にある来年1月か、それ以後になる。多くの学者の見るところ、工程表は大幅に延期るだろうといわれているので、菅の発言は「辞任しない」と言ったのと同じなのだ。

 菅を追いつめながら最後の最後にどんでん返しを食らった鳩山と小沢派の議員たちは憤懣やるかたない思いでいるが、詰めが甘く善意で動く鳩山の弱点が「基地撤去問題」同様今回も露呈した。

 マスコミは今回の行動に対し「国民が大災害で困っているときに党内の派閥抗争をしているとは何事か」という論調である。また、私の周りの多くのひとの考えも同様である。だが、私の見方は全然違う。私の考えは田中宇の意見とほぼ同じであるので以下引用する。

 日本の民主党の小沢派が野党と組んで内閣不信任案をつきつけ、菅首相を引きずり下ろしにかかった。菅は、小沢派の代理人たる鳩山との会談で、今月中に辞任するという趣旨のことを言ったので、小沢派は、それなら不信任案は可決しなくてよいということになって総力結集を見合わせ、とりあえず昨日の不信任案は否決された。しかし今朝になって、菅が、今月中に辞めるなどと言ってない、来年1月まで続投すると言い、鳩山らをだますかたちになったので、今後も政争が続きそうな事態になっている。

 なぜ今、民主党内を割って菅下ろしなのか、震災復興や原発事故対応で大変なときに、なんて意味のないことをしているのか、というのがマスコミなどの見方だ。しかし今回の政争は、09年秋に民主党が政権をとった間もなく後からずっと続いている政争の流れの一環だ。対米従属を国是としてきた官僚機構の言いなりになっている菅と、対米従属の一本槍をやめてアジア重視など、多極化する世界に日本を適合させていく国是の転換が必要だと考えている小沢らとの対立の構図である。

 私は以前「民主党の党首争いの時以下のような記事を書いた。

民主党党首選挙     2010年9月1日

 民主党の党首選挙が始まった。
 候補者は現首相の菅直人と元幹事長の小沢一郎である。鳩山由紀夫が調整して一本にまとめようとしたが、うまくいかず、選挙になった。
 二人の争いを私は面白く見ている。というより、大きな関心を以て見ている。なぜなら、この争いは私たち国民にとってもかなり重要な政策の争いであるように思うからだ。

1、菅直人の政策は、基本的には自民党・小泉内閣と同じである。
@ 政府の役割は出来るだけ小さくする。(国会議員の定数削減、公務員削減)
A 財政赤字を減らし、健全財政をめざす。(消費税増税、圧縮予算)
B 官僚とは折り合いをつけて仕事を進める。
C 普天間基地は辺野古に新設・移転する。(対米従属)

2、小沢一郎の政策は総選挙での民主党公約の実現である。
@ 政府の役割を大きくする。(子供・農家補償などの手当支給を続ける)
A 消費税は現状のままにし、予算の組み替えで財源を確保する。
B 官僚主導から政治主導の政治に変える。(官僚の答弁禁止や天下り全面禁止など)
C 普天間基地は沖縄・アメリカと再度話し合いを持ち決定する。(対米自立を志向)

 菅直人の政策は自民党が長年行ってきた政策と基本的に同じである。小沢一郎の政策は鳩山が当初やろうとして失敗した政策とほぼ同じである。

 私は小沢一郎の政策を支持するが、彼の政策の弱点は財源だ。というのは、既に明らかなように、鳩山内閣は民主党のマニフェストを次々に弱めてきた。その理由は財源がなかったからである。選挙中は「無駄を省く」といってきたが、それだけでは財源が確保できなかったから、仕方なく公約を薄めてきた。
 小沢一郎はそのマニフェストを再び持ち出した。財源確保については「予算の組み替え」といっている。収入額が決まっているのに「組み替え」をすることによって新しい金額が生まれることはないはずだ。だとするとマニフェストに掲げた金額をねん出するためにはどこかを大幅に削る必要がある。何を削るのか、私はその内容について疑問を持っている。
 もし小沢が本気で財源を考えるのならば、軍事費(思いやり予算約2000億円や武器購入費等)と法人税減税(2兆5000万円)見直しに手を付けざるを得ないはずだ。だが今のところそれについて小沢は何も言っていない。私はそこがどうなるのかを見たいと思う。そこに手をつけるようだったら小沢を支持出来る。

 菅直人の政策は見るべきものは何もない。特に、議員定数削減は今迄の誰よりも悪い。彼は、無駄をなくすという公約の一環として議員定数削減(51億円)を述べているが、財源でいうならば、政党助成金(315億円)を廃止するならはるかに多く支出が削減できる。でもそれはやろうとしない。だから、この政策は財源確保や無駄の排除が目的ではなく少数政党排除と自らの権力維持が目的であることが分る。
 消費税増税は民主党の公約にもなかった菅直人の構想である。この構想は既に批判されているように、法人税の減税とセットになっており、大企業の為の大衆課税といってよい。

 ここで特記しなければならないのはマスコミの対応である。特に朝日新聞はほとんど全紙面をあげて露骨に菅直人を支持している。そのやり方は「小沢がいかに悪者か」という宣伝を全力を挙げて行っている。たとえば党首選挙に小沢が立候補した時に「あいた口がふさがらない」という社説を書いた。続いて「どちらが党首としてふさわしいか」という世論調査の結果を発表した。それによると菅直人が60%を超えており、小沢は20%を切っていた。中でも一番の問題は二人の政策の違いをほとんど報道しないことであった。この傾向は私の見たテレビでも同じである。
 見ない新聞やテレビは知らないが、これはかなり偏向した報道だと私は思う。

 私が言いたいことの第一は「民主党は国政のあり方をめぐって上記のように相反する2つの勢力がいるので、これは派閥争いというより党の在り方をめぐる基本的な政策争いである」ということである。ということは、この不信任決議が通ると国の在り方がかなり大きく変化する可能性があったということでもあるが、これはあくまでカッコ付きである。
 第二は菅が首相では原発問題もうまく終息できないのではないかと思っている。まず。彼はやたらに怒鳴りつけるようである。東電の幹部を怒鳴りつけたり、政府の役人を怒鳴りつける。視察に行った時も説明の仕方が悪いと怒鳴りつけたそうだ。これでは周囲の信頼が得られない。思いつき発言も多いと思う。十分な準備をせずに発表する。原発対応なども東工大の仲間を集めて対応したり、個人プレーが多い。原発対応部署をたくさん作りながら、全体の最高責任者が不在であることなども問題だ。

 


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