日本的集団主義 「立場上」という言いわけ  2011年6月15日
 
  「市民会館建て替え条例制定を求める」署名を集めている。印鑑の押印、生年月日記入というハードルの高い署名なのでどれだけやってくれるのか心配だったので、はじめは仲間内のような人をまわり署名をしてもらっていた。しばらくして、Oさんが署名簿を持参し、「おれは近所をはじから回っているが、ほとんどの人は署名してくれる」と言ったのを聞いて「それでは俺も」と思い、片っ端から回り始めた。歩いてみると、予想に反し、ほとんどの人が署名してくれた。
 百軒ほど回ったのだが、五軒に四軒は署名に応じてくれた。住民投票条例についてもかなりの人は知っており、署名・捺印についても抵抗なく応じてくれたのは予想外だった。市民会館建て替えについては知らない人は一人もいなかったし、多くの人は反対を表明した。中には「先日市民会館を新設せよと陳情してきた」と言う人もいた。彼も、投票によって建て替えの賛否を問うことには異議がない」と言って署名してくれた。近所をまわっているといろんな反応がある。ほとんどの人は「もっともだ」と言って署名してくれるが、中にはしない人もいた。
 「議会が決めるから、投票までする必要はない」と言う人が一人いたし、「どちらに決まってもかまわない」と言う人もいたが、一番多かったのは「立場上署名できない」と言う人がたくさんいたことが意外だった。

 一人は「うちは市役所に勤めているので、、、」といって断り、もう一人は「立場上具合が悪いので今回は勘弁してください」と言われた。中には「主人は署名しますが、私は以前市役所に勤めていた関係でちょっと」という奥さんもいた。断った後、私に市民会館を強引に作ることの馬鹿らしさ、住民の声を聞こうとしない市長への批判を長々と話したのだからどうも納得がいかない思いをした。

 公務員が住民投票条例の受任者になることは「懲戒」の対象にされることは聞いていたが、自分が署名することは全く問題がない筈だ。もし、そんなことがあるならば、公務員には思想信条の自由がないということになる。表現の自由もないことになるではないか。だから、そんなはずはない。だとすると、立場上できないかのような言葉によって署名を断る理由としていたのだろう。

 署名をするかしないかは罰則が適用になる問題ではないが、上司から見て好ましいかどうかという問題はあるだろう。原発反対署名だけではない。新聞やテレビは何かにつけ「自己規制」している。NHKは従軍慰安婦問題の番組で内容を変更したのをはじめ、政府の意向に反する内容は放映せず、気にいるような内容に自己規制しがちである。

 休日中のビラまきが検挙される時代である。いつどのような攻撃があるかわからないなかで、たとえ違法でないにしても、お上の意向に反する行為は自粛す方が無難だという庶民の知恵なのだろうか。だが、これでは暗黒の時代の再来を呼び込むことになる可能性の方が大きくなるのだ。


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