柄澤斎「肖像シリーズ」の面白さ その1   12月12日

 柄澤斎の肖像シリーズ展を開催中であるが、あまり人が来ない。宣伝をあまりしないためもあるが、この肖像画の面白さが知られていないことが主な原因だ。

 私がこの版画の存在を知ったのは15〜6年前のことになる。
 『版画藝術』という雑誌で「モンテヴェルディ」の肖像をみてその素晴らしさにこころを奪われた。だが、その版画の大きさや価格についてはまったくわからなかったし、問い合わせることもなかった。しばらくして『版画藝術』にシロタ画廊で柄澤斎の肖像展を行うという広告が載り、この作品が一連の肖像シリーズとして制作されたことを知った。値段を調べてみるとそれほど高くない。これなら私にも手が届くと思い思い切ってシロタ画廊に肖像シリーズの全作品の写真と価格を問い合わせた。

 写真を送ってもらいじっくりと眺めてみるとほとんどの肖像は実に面白い。
 たとえばアンデルセンを見ると、正面の顔と横顔が同じ肖像に描かれている。

 肖像]\ ハンス・クリスチャン・アンデルセン
 
 シルクハットをかぶったアンデルセンの肖像であるが、右側をよく見ると黒いシルエットで彼の横顔が見える。
 更に眺めているうちに、眼の横に猫が見えることに気がついた。確かに白い猫が右側を向いている。「これは面白い、他にも何かあるのではないか」と隠し絵を見るような気持ちで捜したところ、眉のしたには鯨らしきものが、口の下には爬虫類のようなものが見えてきた。
 こんなことをしていると本来の絵をみる視点がどこかに行ってしまいそうなので止めたのだが楽しませてもらった作品である。

 このような遊びは別としてもアンデルセンはよく出来た肖像である、シルクハットの絹糸の光が見事に表現されているし、表情も多くのものと違い一癖ある人物像が表現されている。

 このように眺めているうちに肖像シリーズのほとんどの作品がそれなりのいわれを持っていることに気がついた。


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