45回転と33回転    05年4月8日

 土蔵を整理していたら娘が小学校6年のとき長野県ピアノコンクールで弾いたレコードが出てきた。娘が弾いたのは第1回のコンクールだったからもう20年も前のことになる。篠ノ井市民会館で弾いたのを聴きにいったことを思い出した。なつかしさもあってプレーヤーにかけて聴いてみた。

 針をおろすと間の抜けた声で「昭和小学校6年 田島由子さん」というアナウンスが聞こえた。
 曲が始まったが、これがなんともたどたどしい弾き方なのだ。あの時はもう少しきちんと弾けていたように思ったのだがこんなだったのか。それに、間違いも多い。トレモロなどはひどいものだ。バッハのフランス組曲なのだがレコードを聴いているだけで汗をかいてしまう。
 ようやくこの曲が終わりラベルの「版画」が始まった。やはり超ゆっくりの演奏だが、こちらのほうは少しは聴ける。ゆっくりではあるが自分なりの曲想を出そうとしていることが伝わってきた。そこで、もう一度聴く気になって繰り返し聴いてみた。うまくはないがこちらは面白い。「なるほど、こんな風に弾いていたのか。子どもではあってもそれなりに曲のイメージをもっていたのだなあ」と思い、満足した。

 そこで娘にも聞かせたくなり、次の日にうち中でレコードを聴いた。みんなの意見も同じで、バッハはよくないことで一致した。娘は「もっとうまかったような気がしたがなあ」と腑に落ちないようだったが「いいものが見つかった」と喜んでいた。

 2日ほど過ぎて娘が
 「父ちゃん、今日あのレコードを中村先生と聞いてみたよ。この前33回転で聴いたでしょう。あれは45回転のレコードだ よ。45回転で聴けばフランス組曲だってずっといいよ。中村先生が45回転にしてかけてみて,うまい!と感心していたよ]
と言って、私に抗議した。

 そうだった。あのレコードは45.回転だった。
 45回転レコードなど10年以上聴いたことがないので、それがあるということにすら気がつかなかった。なんともうかつな失敗だった。早速もう一度レコードを聴いてみた。なるほど、45回転と33回転ではかなり違う。こちらのほうがはるかにうまい。だが、聴きながら面白いことに気がついた。

 バッハは演奏が早くなったのでたどたどしさはごまかせたけれど、演奏の面白さはなく、むりやり弾かされている感じなのだ。だが、ラベルは遅くはあるがそれなりに曲になっている。「こう弾きたい」という願いが見えるのだ。だから、聴いていても面白かった。

技能が未熟でうまく弾けなくとも、演奏者が曲に感動し、自分なりの演奏を求めるならばその思いは演奏した曲に反映すると言うことが良く分かった。
大変未熟な演奏を、33回転のゆっくり演奏で聴いたため、それがよりはっきり分かって面白かった。


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