斉藤さんの死に思う   5月29日(日)

 イラクで攻撃され殺害された斉藤さんはフランスとイギリスの傭兵だった。
私は日本人が傭兵になるなどということは夢にも考えたことがなかったので、そのことが分かったときは
大変驚いた。

 傭兵というとまず思い浮かべるのはローマ帝国の傭兵であり、近いところではアルジェリア戦争のときのフランスの傭兵である。ごく最近ではファルージャでつかまり住民に殺されたアメリカの請負会社の4人がいる。だが、わたしは、そのことは日本人とは全く関係がないとばかり思っていた。

 ところが同じような傭兵になっている日本人が40人もいると知り、そういう世界が存在していることを知った。おそらく多くの日本人は同じ思いなのではなかろうか。

 テレビのインタビューで斉藤さんのことについて質問された何人かは「自分の生きがいを見つけて飛び込んだのは勇気ある人だ」と答えていた。金儲けのために傭兵になったのなら評価できないが、自分の生き方をかけてその道を選んだとしたら尊敬できる、といったニュアンスであった。

 だが、「生き方として傭兵を選ぶ」ということはどういうことだろう。この仕事に生きがいを見つけるとは「戦争に参加することに生きがいを見つける」ということであり「戦うことに生きがいを感じる」ことである。斉藤さんがこのような考えを持っていたかどうかは全く分からないが、インタビューを受けた何人かの男女はそう思っていたように見える。

 このような考えは高遠菜穂子さんたちが「戦争被害者と悩みや苦しみを共有」してNGO活動をしているのとは全く違っている。「苦しみ・悩みの共有」ではなく「敵に打ち勝つ喜び」に共感すると言うことである。私はこのような風潮を不安な思いで見つめている。斉藤さんの死は悲しいことでありお気の毒なことではあっても賛美すべきことではないだろう。もしも賛美したりあこがれたりするような風潮が現れたらそれを打ち消したい。

 気になっていることのもうひとつは、憲法9条と傭兵の関係だ。

 憲法9条はご承知のとおり交戦権を禁じている。そうなれば当然のこととして「戦時裁判」はない。 適用されるのは「刑法」であり「民法」である。

 刑法を見ると次のようになっている。


(国民の国外犯)
第三条  この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
 第百八条(現住建造物等放火)及び第百九条第一項(非現住建造物等放火)の罪、これらの規定の例により処断すべき罪並びにこれらの罪の未遂罪
 第百十九条(現住建造物等浸害)の罪
 第百五十九条から第百六十一条まで(私文書偽造等、虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使)及び前条第五号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第百六十一条の二の罪
 第百六十七条(私印偽造及び不正使用等)の罪及び同条第二項の罪の未遂罪
 第百七十六条から第百七十九条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、集団強姦等、未遂罪)、第百八十一条(強制わいせつ等致死傷)及び第百八十四条(重婚)の罪
 第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪
 第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪
 第二百十四条から第二百十六条まで(業務上堕胎及び同致死傷、不同意堕胎、不同意堕胎致死傷)の罪
 第二百十八条(保護責任者遺棄等)の罪及び同条の罪に係る第二百十九条(遺棄等致死傷)の罪
 第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪
十一  第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、国外移送目的略取等、被略取者収受等、未遂罪)の罪
十二  第二百三十条(名誉毀損)の罪
十三  第二百三十五条から第二百三十六条まで(窃盗、不動産侵奪、強盗)、第二百三十八条から第二百四十一条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強盗強姦及び同致死)及び第二百四十三条(未遂罪)の罪
十四  第二百四十六条から第二百五十条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝、未遂罪)の罪
十五  第二百五十三条(業務上横領)の罪
十六  第二百五十六条第二項(盗品譲

 斉藤さんに限らず、外国の傭兵になった人は当然のことながら兵隊の任務につく。そうすると銃撃戦をしたり家を破壊することもあるだろう。ところがそのような行為は戦時では許されるが平時は許されない。戦争をしない(交戦権のない)日本人には「戦時」はない。

 だとすると、たとえ外国の傭兵になったとしても銃撃したり破壊したり放火することは許されないのだ。それを命令することなどとても出来ないはずである。もし、銃撃を命令したとするとそれは「殺人強要」とか「殺人幇助」になるのだと思う。

 日本国憲法9条を持つことはこういうことなのではないのか。だが、こういう論は私の見る限り、新聞には載らなかったしテレビでも放映されることはなかった。私は素人なので専門的なことは分からないのだが、この問題について法曹界の人はどう考えているのだろうか。また、憲法9条を守るための運動をしている人はどう考えているのだろうか。
 
 これはかなり重要な問題だと私は思っているがどうなのだろう。
 このことはもっともっと世界に知らせたほうが良いのではないだろうか。
「たとえ外国の傭兵になったとしても、日本人は人を殺したり、傷つけたり、物を破壊してはならないと法律で決まっているし、それを破ると罪になる」と言うことを、、、、


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