大西暢夫写真展をふりかえって        10月20日

 9月16日から10月9日まで大西暢夫写真展「ひとりひとりの人」−僕が撮った精神科病棟ーを行いました。
写真展を終わったところで感想を書こうと思いました。いままでは、展示後に感想を書いたことがありませんでした。感想が無かったということはありませんでしたが、今回は忘れないうちに現在の気持ちを書き留めておこうと思います。

、「ひとりひとりの人」というタイトルが気に入りました。
 この作品は大西暢夫さんが数年前から雑誌に連載した写真を一冊の写真集にして出版したタイトルと同じものです。この写真集は櫻井卓児さんから紹介されて初めて知りましたが、見た瞬間から惹かれました。登場する患者さんを特別な人としてでなく、私と同じひとりの人として見ていることに共感しました。また、人間を見る目の温かさが心を打ちました。「いつか展示してみたい」と思って大分たちましたが、今年の年度計画に入れることができ、今回の展示会になりました。

2、健常者と全く同じスタンスで接していることのすごさ
 展示期間中に大西さんの話を何回か聞きました。そこで大西さんは「私は彼等とは特別な接し方をしていません。いまここで話しているのと全く同じように話したり笑ったりしているだけです」と発言していました。
この言葉はちょっと聞くと当たり前のように聞こえますが、実際にはなかなかそういかないでしょう。自分のことを振り返ってみればよくわかります。私は何回か精神障害者と話したことがありますが、その接し方はどこかぎこちないものでした。相手を特別な人と意識しているからです。
 大西さんは、相手をありのままに認めるところから出発していますが、それはできるようでなかなかできるものではありません。この展覧会を観に来た中には専門家もたくさんいましたが、彼等が写真の表情に驚いていましたから、精神障害の患者さんがこのような表情になるのは珍しいのではないかと思いました。それを、初対面の人から引き出した大西さんはすごい人だと思います。

3、来館者の感想に感激しました
 今回の展示を観に来た人の中には、障碍者の方、施設で働いている人、医者、教育者、施設の経営者など、多くの関係者が含まれていました。
 いつもそうしているのですが、今回もできるだけ来館者と話す機会を作りました。話の中で私の心に残る言葉を聞くことができました。

 
 私は35年間精神病院の看護士をしていたが、ある時期から、すべての患者さんをかわいいと思うようになった。この写真を見て、当時の患者さんにあったような気がして懐かしくなった。この写真を撮ったカメラマンも同じようにこの人たちをかわいいと思ったんじゃないかな。
 この病気の患者さんは、自分の表現の仕方に特徴があって、何があってもニコニコしている人、たえず人に食ってかかる人、すぐ泣き出す人などがいる。初めてきた看護士は戸惑うが、何年も仕事をしていると、それが当たり前になり、それぞれに対応できるようになる。そうすると私も患者さんも仲良くなり快適に過ごすことができるのだ。何年も勤めていると、医者より上手につきあうことができるようになる。

 私は精神障害者施設でボランティアをしているものだ。館長さんの話だと、大西さんは「精神障害者とも普通の人と全く同じに接している」と話していたそうだが、実は同じ言葉を今さっき研修会で聞いてきたばかりだ。さっき聞いたときは「そんなことできるのかな?」と思ったのだが、この写真展を見てあっと驚いた。ここにある写真は何も構えず、普段どおりの自分が出ている。普段でもとびきりすばらしい表情が撮れているように思う。自分の中に構えたところや偏見があればとてもこういう写真は撮れない。

 私は医療の専門学校で教えているものだが、私たちは精神障害の患者さんにこのような顔をしてもらえるために働いている。ここにある顔は何の屈託もなく笑っている顔だが、こんな顔を見ることはなかなかできない。私はこのような笑顔をみるといくら疲れていても疲れを忘れてしまう。このような写真を撮った大西さんにお会いしてみたい。

 私は以前、病院で働いていた。都合で退職した後は別の仕事をしているが、ボランティアで精神障害の患者さんのお世話をしている。現在は毎日が忙しくて仕事に追われているが、ボランティアで障害のある人と接していると、そのときは時間が止まったように感じる。周りの出来事から隔絶された二人だけの時間がゆっくりと過ぎていき、私は心が癒されていく。助けてもらっているのは私ではないかと思うことがしばしばある。
 
 
10月1日にワークショップを行いました。
参加者が2名ずつ組になり、お互いの写真を撮りあうという試みでした。
最初は参加した人が集団遊びをして、手をつないだり、一言しゃべったりして雰囲気を作り出した後、二人組を作りました。そこでティータイムにしてお茶を飲みながら初対面の自己紹介をし、互いの写真を撮りあいました。その中から気に入った1枚を選んでプロジェクターで大写しにして写真の紹介をしました。

    写真を取り合う参加者

このワークショップでは嬉しい出来事がありました。


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