まちづくりと憲法
(憲法講座) ー小川久雄さんー  2006・2・22

2月20日の憲法講座は小川久雄さんに「まちづくりと憲法」について話してもらいました。その概要と感想を書いてみます。

                     
               まちづくりと憲法      小川久雄

 「マチヅクリ」というと 「町づくり」(行政から見た町づくり) 「街づくり」(都市計画、道路整備等の視点のまちづくり) 「まちづくり」(暮らしのあり方からみたまちづくり)という意味があります。私がお話しするのは最後に書いた「まちづくり」だと考えてください。

1、憲法の中に書かれている「まちづくり」関連項目
憲法の中でまちづくりに関わる条項はたくさんありますが第3章の基本的人権に関わる諸権利が重要です。中でも第25条「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。A 国は、すべての生活部門について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」が最もかかわりが深いでしょう。

日本国憲法に書かれていない権利では「環境権」「交通権」「住生活権」「レクリェーション権」「営業権」「景観権」「自己実現権」などがありますが、欧米では景観権などすでに書かれている権利もあります。書かれていない権利はないのかというと、環境権がすでに認められつつあるように、現在の憲法を活用することによってもっと美しく、快適なまちづくりができます。25条では「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」となっていますが、より充実した健康で文化的な生活権の保障の方向に「活憲」させていくことが大切です。

基地問題は、憲法の視点で見ると、さまざまな権利が侵されていることがわかります。「すんでいる人々の安全」「環境破壊」「土地問題」「水問題」「営業や職業選択」にいたる多くの問題をはらんでいます。この問題を棚上げしたままのまちづくりはないでしょう。平和の問題はまちづくりをするための前提です。平和なくしてまちづくりはありません。

2、まちづくりは「資本の論理」と「生活空間の論理」のたたかいのなかでつくられる。

 最近、まちが極端に資本の論理し支配されるようになってきて、生活の場から遠ざかっているようにみえます

・弱者が住めなくなり、追い出されるようなまち(大規模店の郊外進出と駅前商店街の寂れ方)がたくさん生まれています。
・過疎化によって人が住めなくなってきているまち(医者がいない、郵便局がなくなる、学校がなくなる、歩いていける商店がなくなる)が増えています。
・大量消費と大量廃棄で、廃棄物・環境問題が深刻になっているまちがあります。(大規模廃棄物処理施設が建設され、廃棄物をたくさん出さなければ機械が機能しないのでゴミを増やして燃しているいるという逆転現象もおきています)

 これに対し、憲法の基本的人権擁護の立場からさまざまな規制・対抗措置がとられてきました。例えば「福島県商業まちづくりの推進に関する条例」などは典型的なものです。長野市でも最近イオン他の出店にストップをかけました。

 しかし、この問題はそう簡単ではありません。「大型店の規制は自由な営業権を否定する憲法違反だ」「映画館などを内蔵した大型店は文化施設ではないか。我々も文化を享受したい」「農業で食えないときに土地を貸すことで生活出来るのだ。生存権を否定するのか」の意見もあります。

 住民の中に広がった資本の論理とまちづくりの諸問題
生活手段が利用価値から資産価値に転化し、まちづくりを困難にしつつあります
・浅川治水整備計画の遊水地計画では地元は「地役権を設定すると土地の資産的価値が下がる」と難色を示しています。
・駅前整備計画では「土地のただ取り反対」のスローガンが掲げられます。(今までは土地整備をすると土地の値段が上がるから上がる分を拠出するという方式で道路や公園を作ってきた例が多い)

3、新しいまちづくり、つまり共同のまちづくりがはじまった。
地主の皆さんの上記のような主張と、まちの人々の住みよい生活づくりとの合意をどのようにつくるかを考える必要があるでしょう。「公共の利益」と個人の利害の対立ですが「公共」と言う中味を見ると公権力という面と共同という面があります。そこで公共を「公」と「共」にわけ「共」と「私」との接点を探ることが大切ではないでしょうか。

・土地を出し合って環境整備を行う土地区画整備事業(農林道拡幅整備)
・快適なまちづくりのために、土地利用の制限に応じる。(所有権から利用権の時代へ)
・中越地震災害での住宅再建のコミュニティー重視の視点
・松代で実践する「お庭拜見」「登録文化財推進事業」は個人住宅や庭園が準公共的文化資産と して位置づけられ、まちづくりに活かされる方向で考えられつつある。
・街中ギャラリーなども含め商店は準公共施設である。

4、新しい公共=共同のまちづくりを進める場は自治体であり、地方自治が重要になる
憲法を盾にした住民の運動の成果により、地方自治は住民参加から住民参画へと発展してきました。
・請願権、直接請求権、行政不服請求権などが認められるように変化してきました。。
・都市計画法や地方自治法の「基本計画策定義務」により「河川改修、介護保険福祉計画、地域福祉計画などに住民参加が義務付けられ計画策定段階から住民が参加できるようになりました。
・公共事業や開発に際して地元首長の合意を条件とする規定も充実してきました。
・高齢者福祉や子育ての分野からコミュニティーの考え方も広がってきています。(参加型・討議型民主主義)
・その中から住民主体の持続的なまちづくりの実践が行われてきました。栄村の取り組みなどは一つの行き方です。
このような動きに対して、平成の大合併、道州制導入そして憲法改悪などの住民自治・民主主義抑制の方向の施策が上から進められてきています。

住民自治が築き上げてきた成果をよりどころに、自治を破壊しかねない動きを阻止することが大切だと思います。
以上が小川さんの問題提起の大要です。

小川さんの講義でよかったのは、まちづくりのあり方を前向きにとらえ、これから向かうべき方向を示してくれたことでした。それは「エコール・ド・マツシロ」で試みられた取り組みであり、栄村で取り組まれていることでもありました。

私は「公共の利益のため」という名目で私権が踏みにじられることを恐れてきました。小川さんの提起は私の危惧とどこかでぶつかるような気もしないでもありません。栄村の試みはともかく「お庭拝見」などは一年間だから可能だったものの、数年も続けられたら家族は大変ではないかと憶測してしまいます。そのとき「みんなの意見」と「私の意見」をどう調和するかという問題が起こるような気がしますが、その点は後日ゆっくりと話し合ってみたいと思っています。

問題が身近だっただけに有意義な会になりました。

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