長野県の教育行政を考える     7月1日(土)

 「田中県政を考える」シリーズ第3弾として、今回は私たちの仲間の中で最も評判の悪い教育行政を検討してみました。
 前回の選挙で田中知事を熱心に推した教育関係者が今回は「田中だけはごめんだ」と言っています。特に現場の人の田中知事への感情は憎しみにも似たものがあるようなので、本当の姿を検証してみる必要を感じました。主催は長野県民間教育研究団体連絡協議会OB会と当美術館です。

 以下、集会の概要です。

 主催者挨拶

 坂口光邦(民教OB) 
 
 現場を離れると現場の様子がわかりません。現職とOBの交流が今必要ではないでしょうか。かつて学力テスト阻止闘争が行われ、全国で闘われました。それが最近ほとんど抵抗らしき抵抗も無いままに導入されようとしています。長野県の通学区を12通学区にするためには長年の闘いがありましたが、たいした論議もされないうちに崩されました。
 現在の教育をめぐる情勢は、教職員だけの問題ではありません。すべての国民にとって大変なことが起ころうとしています。現場が忙しくて十分な論議の時間が無いのかもしれませんが、このままだと重要な問題が論議されずに次々に導入されてしまうことが懸念されます。
 われわれOBは多少の時間的余裕を持っているので、これらの問題を考えることも可能だと思います。そこで、例えば教育問題シンクタンクのようなものをつくり、研究を進めたり、提言をしたりすることを考えたらと思っているのですがいかがでしょうか。
 今日の論議も踏まえながら考えていきたいと思います。

 新海寛(県民教)

 
県教組が民主化する際は民教(民間教育研究団体連絡協議会)の会員が大きな役割を果たしました。当時は研究大会に800名以上の人が集まりましたが、現在は100名〜200名になっています。学校の様子も当時とはずいぶん変わり、職員会の論議も、校長の結論がまずあって、何を論議しても最終的には校長の意見になると言われています。これでは学校が生き生きするはずがありません。
 田中知事の手法もこれに似ているようで、現場では「田中支持」と言う言葉は口に出せない雰囲気があるようです。
 今日の論議の中でこれらのことも十分話し合っていただきたい。

 倉科浩彰(高教組書記長)

 長野県の教育行政の一番の問題点は「県教委には何の決定権も無い」ということです。
 高校にはさまざまな制度改革が次々に導入されています。その矛盾は現場を直撃しています。現場からは悲鳴が聞こえてきますが、高教組が現場の声を教育委員会にぶつけても教育委員会は何一つ解決するすべを持っていません。知事の顔色を伺うだけで当事者能力が無いのです。
 今回の高等学校統合案は強引なもので生徒、父母をはじめ地域の合意を得ないまま来年度から実施するというものです。私たちは統合すべて反対の態度は取っていません。「地域や父母の合意が得られないときはしばらく待つなり、再検討することがあっても良いのではないか」と主張しています。だが、県教委はいかなる妥協も認めず、来年度から実施するといっています。すでに予定校の校名を募集したり、入学要綱を作らせたりしています。これに対して高校生や父母からも不信の声が上がっています。

 昨日共産党が提案した「高等学校設置条例の一部を改正する条例」はこれに待ったをかけることになるかもしれません。教育委員会は「教育委員会の執行権を侵すものだ」と言っていますが、議会は恐らく通るでしょう。通れば必ず影響が出ます。
 私たちは、いずれにしても、地域のかたがたや父母・生徒たちとともに、県民運動を進めていくつもりです。議会任せ、教育委員会任せでは本来の教育権は守れません。この問題は県庁の中の問題だけではなく県庁の外でのこれからが踏ん張りどころだと思っています。

              高等学校設置条例の一部を改正する条例(案)

高等学校設置条例(昭和39年長野県条例第64号)の一部を次のように改正する
第2条の次に次の1条を加える
(統合または廃止)
第3条 別表に掲げる高等学校を統合または廃止する場合及び高等学校の統合または廃止につながる当該高等学校の生徒の募集停止を行う場合は、議会の同意を得なければならない。

付則
(施行期日)
この条例は、公布の日から施行する。
(提案理由)
児童生徒に行き届いた高等教育を保障するために教育条件を整備することは教育行政の責務である。少子化の進行により高等学校の統廃合が現実的課題となっている中、統廃合は当事者である高校生を始め地域住民の声を反映させ、住民理解を得た上で丁寧に進めることが求められる。高等学校の廃止には議会の議決が必要とされているところであるが、現実的に廃校同然になった段階で議会が存続の可否を決する事態とならないよう、高等学校の統廃合と統廃合につながる募集停止について議会の同意を得ることとする条文を加えることにより、高等学校の統廃合に関して慎重な審議を保障し、統廃合が県民的議論と理解の中で実施されることに資するため


原治夫(県教組書記長)

 教職員は今までも多忙だったのですが、超多忙になっています。
 今度の指導要領になってから選択教科が入ってきました。もう一つは総合的な学習の時間です。これが導入されてから教師の空き時間がほとんどなくなりました。空き時間と言うと誤解されそうですが、授業準備の時間で、教材準備や日記を読んだりする時間です。この時間はほとんどなくなりました。一日中授業に出ずっぱりです。というのは、、、

 選択教科というのは、一つの授業時間にたくさんの講座をつくり、子どもたちが自分の受けたい講座を選択する授業です。講座が増えるとそのぶん教師が必要になりますから、空き時間が減ることになります。総合的学習の時間は子どもたちの主体性に任せるということで、校内で調べる、表に出て行って調べる必要があります。授業の準備は格段に増えることになります。中学校では生徒指導のため、問題がおきたときや行事があるときは先生があちこちに出て行って張り付きます。こんな中で昔ながらの研究授業ー見せるための授業ーも残っています。

 このようにして先生は空き時間がなくなり、忙しさが増したうえ、日常的に準備不足の授業が増えています。先生は疲れ、そのしわ寄せはもちろん子どもたちにいきます。

 評価については子どもの評価を日常的に記録することが求められています。評価の観点が決められ、観点ごとの評価を記録する作業は大変で、すべてまじめに記録したら、それだけで終わってしまいます。教師の自己評価(職務目標制度)もおこなわれるようになりました。1学期の初めに学級経営や教課運営についての自己目標を決めます。このとき管理職と面談します。次に中間で管理職と面談して中間総括をし、目標の修正やこれからの目標を決めます。最後に学年末に3回目の面談して一年の結果を評価するというものです。学校の評価には外部評価が取り入れられつつあります。学校を外部から評価するというものです。

 長野県では教職員の評価制度については組合も評価委員のメンバーに入り「給与に結びつかない」ことで合意されていますが、他県では即給与に反映する評価制度が導入されています。

 田中県政でいうと一部の支持者の意見だけを聞いていろいろ決めていることが多すぎる。例えばある人が知事にメールを入れると即座に金がつくことがあるが、同じ学校で多くの教職員が何年もにわたり要望していることには音沙汰も無い。多くの職員はこういうやりかたに不信を持つようになっている。
 知事は「改革は革命的にやらねばならない」といっているが、言い換えれば「早くやれ」ということだ。だが、教育の仕事は早くやることがいいとはいえない。

参加者によるトーク

D・N  学力問題に関心があるが藤原正彦氏の教育論に共感した。共感した部分は「小学校3年生までは国語をきちんと教えるべきだ」「こどもにはいたずらをさせろ」という部分だ。現在の教育の在り方は日本の未来を考えると自殺行為に見える。
 最近フィンランドの教育について知ったが、ここから学ぶことはたくさんあった。

M・Y  ここにくるとき母ちゃんから「知事は田中よ」と年を押されてきた。教員をしている息子の考えは反対だった。一家の中でも分裂しているのが田中県政の評価だ。
 現場の人は「最近の情勢は大変だ」、とか「昔とは条件が違う」と言っている。だが、我々の時代は楽であったかと言うと大変困難な時代だった。孤立無援の中で仲間を増やして闘った。だから、「大変だ」とか「条件が違う」とかいうのはやめにしよう。いつも大変なのだ。だから、手を結んで闘おうではないか。

N・K  「県政フォーラム」を5回行いました。最終回に私がまとめの報告をしました。そのとき4つのものさしで県政を評価しました。
@日本国憲法第8章(地方自治)のものさし
 日本の自治体を見渡せば定員割れをしている職員がたくさんあります。例えば消防職員です。最近の火事はほとんどが全焼しています。これなどは定員割れと関連があると思います。
 合併問題も国は合併ありきを唱えましたが、これでは市町村が住民とのかかわりが薄くなります。
A世論から見たものさし
 世論調査協会の調査によれば県政に対する県民の関心の第一は「県財政」でした。1兆6千万円の借金をかかえてどうするのかと言う問題は県民の最も懸念する課題でした。
 この問題で田中康夫氏は全国でただ一県、借金を3年連続で減らしています。
B国の規制への対応のものさし
 地方に対する国の規制が厳しくなっていますが、これに対してどのような態度を取っているでしょうか。
 国は「国民保護法」というとんでもない法律を作って、非常時に自治体が行う対応を作るよう求めてきま した。田中知事の対応は「国際紛争は国が外交によって危機が生まれないようにすることが大切だ」と いう前文をつけました。同様の文をつけた県は2〜3あるのみだそうです。
C平和のものさし
 現行憲法・教育基本法は変えないというスタンスでした。
 このように見てくると、田中康夫の行ってきた県政はプラスに評価できるように思われます。

 田中康夫氏についていわれていることに「彼は言い出したら自説を絶対に曲げない」と言う俗説がありますが、事実を見るとかなり違っています。
@ 彼は当初、起債が増えても地方交付税で解消できると主張していましたが、「有利な起債など無い」という私たちの研究所の説明を聞いて「わかった」といって変わりました。
  「30人学級」もはじめは「必要ない」と言っていましたが、良く話す中で変化しました。
B 市町村合併についてもはじめは「合併推進」でしたが、話を聞く中で大きく変わりました。

 これらの事例を見ますと、田中康夫は納得すると変わるということがわかります。変わらないのは、その分野で納得させる努力が不足していたようにも思います。

M・Y  いろいろ話を聞いて私自身は田中に投票しても良いと思いますが「田中の応援をしろ」と言われてもその気は全くありません。
@ 中学生は学区制が変わって大変困っています。学校格差が広がり不本意入学が増えています。うち の近くのI高校などは生徒指導に追われ、まともな授業が出来にくくなっています。
A 県の政策がトップダウンで決められています。他の人の意見を聞く耳を持たない。
B 政治的パフォーマンスが多すぎる。。「パブリックサーバントらしく働け」と言いたい。
C 同和行政の変化などは評価できます。学校で無理な授業をしなくてもよくなりました。
D 給料が減ったことはつらいけれど、全体を見るとやむを得ないかなとも思います。借金を減らすことは誰かがやらなければならないことだと思いますから、、、、

K・M  千曲市で議員をしています。
@ 教育基本法について質問するために教育委員を訪問して意見を聞きました。教育委員の構成は、元学校関係者(校長)が2名で、他は民間の人(中企業の社長)がなっています。学校現場にいるときは「民間の人のほうが見識があり、校長等より話がわかる」と思っていたのですが、今回話してみるとあまり見識があるようには思えませんでした。教育基本法について話したのですが、委員が教育基本法を読んでいなかったりよく知らないので、10条などについて話しても話がかみ合いませんでした。
A 現場のことも知りたいと思い二名の現場教師を訪問して話を聞きました。二人が話したことで気になったのは「現場は評価で振り回されている」という言葉でした。評価の視点に基づき子どもの態度や行動を点数化する作業は大変で、本来の教材研究が出来ないと言っていました。
B 千曲市では全校で一斉学力テストを行うことが決まっています。これなどは全国で行おうとしている学力調査の先取りで憂慮されることなのですが、ほとんど問題になっていません。

M・M  昨日淺川ダム問題で近くの叔父さんを訪問したら「学校の先生は何してるだい。自分の給料が少 し下がったと言って反田中だそうだが、それでいいだかい」と言っていた。
 田中知事は同和教育課を廃止して子ども支援課を作りました。この意味は大きい。それまで教師による体罰はいくら訴えてもどこも取り上げてくれなかったから、ほとんどは泣き寝入りだった。子ども支援かは保護者の訴えを直接聞き手を打ちますから解決する例が出てきました。それによって子どもがよみがえってきました。これは画期的なことです。

S・H  現場が大変だということは良くわかったが、それは田中康夫のせいなのかどうかを検証する必要があるのではないか。例えば評価のやり方については田中の問題ではなくて国の政策が問題だと思います。忙しさについても指導要領が変わり選択性やゆとり教育が出来たことに原因がありそうだ。これをすべて田中康夫のせいにされたのでは」正確でないだろう。
 私はいま廃プラ問題に取り組んでいます。田中康夫知事は廃棄物条例を通そうと必死ですが、市町村長が強固に反対しています。何が反対なのかというと、「廃棄物処理施設は県と協議してつくる」という項目に対してです。県と協議することのどこが問題なのか良くわからないのですが、広域の廃棄物処理施設は250億円位の金が要りますから、そこに利権が絡むことが予想されます。 そこを県にチェックされたのではたまらないというのが本音ではないかと推測しています。
 長野市では処理施設の修理をしていますが、その業者は国から指名停止を受けている日立です。指名停止を受けている業者にやらせる理由は、その業者以外には出来ないからです。つまり、一度指名を受けて施設を作れば、後は何が起ころうとその業者が整備を含めずっと関わることが出来るのです。ランニングコストだけで年間数十億円です。
 施設を作るとき県と協議することになぜ反対するかお分かりでしょう。田中康夫は利権反対ですから疑念が生じるとどんどんチェックするでしょう。

田島  まとめにはならないが、いくつかの整理をしたい。
 1、田中県政の問題点と国の政策で生じる問題点を整理する必要がある。
 2、OBの役割をはっきりさせて、出来るだけの協力体制を作ること。
 3、そのため、今回のような企画をこれからも続けたい。


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